資本主義と共産主義の違いを分かりやすく
『資本主義』と『共産主義』は、経済のシステムや社会的構造、政治体制などの面で大きく異なります。
それでは、それぞれの違いを比較しながら見ていきたいと思います。
基本的な原理の比較
≪資本主義≫
資本主義は自由市場経済の原則に基づいています。
個人や企業が資本(資金)や資源を所有し、それらを自由に使用して生産活動や交換を行います。価格は市場の需要と供給によって決定されます。
≪共産主義≫
共産主義は公有制(集団所有制)を重視する経済システムです。
生産手段や資源は国家や共同体が所有し、利益や財産の分配は平等を目指します。
市場経済よりも中央計画経済〔政府や中央機関が経済活動全体を計画し、資源の配分や生産活動を指示する経済システム〕が支配している仕組みになります。
【中央計画経済】とは…?
市場メカニズムに頼るのではなく、中央政府が生産、投資、消費、価格設定などの経済活動を調整します。
資本主義経済や市場経済とは対照的で、ソビエト連邦や中国の文化大革命期※など、いくつかの国や時代で実践されました。
しかし、情報が集中することによって革新力が不足するなどの問題に直面し、物事の効率性や成長の遅れを引き起こしました。
【中国の文化大革命とは…?】
文化大革命(ぶんかだいかくめい)は、中国の政治・社会の激動的な時期になり1966年から1976年まで続きました。
毛沢東主席の指導の下で展開され既存の権力構造を打破し、共産主義理念の純化を目指しました。
文化大革命の主な特徴は、学生や紅衛兵(こうえいへい)と呼ばれる若者の組織が、知識人や旧来の権力者を攻撃し文化や伝統を否定する運動を行ったことです。
この運動は暴力などに満ち無数の人々が迫害や拷問、殺害の標的となります。そして経済や教育、文化の混乱が拡大し国家の安定と経済発展に大きな損害をもたらしてしまいます。
その結果、中国社会は混乱し、数百万人の人々の生活に影響を与え、毛沢東の死去とともに運動は終結、改革開放政策が始まることとなります。
所有権
≪資本主義≫
資本主義では、個人や企業が生産手段や資源を所有します。
それにより、所有者は生産物やサービスの利益を得ることができます。
≪共産主義≫
共産主義では、生産手段や資源は集団や国家が所有します。
個人所有は制限され、生産物やサービスの利益は共同で分配されます。
経済活動の調整
≪資本主義≫
資本主義では、市場メカニズムが経済活動を調整します。
需要と供給の関係に基づいて価格が決まり、競争によって効率的な生産が促進されます。
≪共産主義≫
共産主義では、中央計画によって経済活動を調整します。
政府や中央計画当局が生産や配分を決定し、市場メカニズムよりも集中的な統制が行われます。
財産と利益の分配
≪資本主義≫
資本主義では、財産や利益は所有者や投資家によって獲得できます。
労働者は労働力を提供し、賃金として報酬を受け取ります。
≪共産主義≫
共産主義では、財産や利益は共同所有され、平等に分配されることが理想とされます。
労働者は労働に対する貢献に応じて報酬を受け取りますが、個人の利益よりも集団や社会全体の利益が重視されます。
政治体制
≪資本主義≫
資本主義はたびたび民主主義〔自由な統治〕と結びつきますが、政治体制は多様です。
民主主義、共和制、立憲君主制などが資本主義経済と共存することが一般的となります。
【民主主義】とは…?
国民が政治的な意思決定に参加し、政府の権力を制約する政治体制。
【共和制】とは…?
国家の元首が選挙によって選ばれ、世襲的な王族や君主制ではなく、通常は国民が代表者を選出し政府を形成する政治体制。
【立憲君主制】とは…?
国家の元首が憲法に基づいて権限を行使し、通常は議会や政府によって制約される政治体制。
≪共産主義≫
共産主義は通常、一党制の政治体制と結びつきます。
党が指導する中央集権的な政府が統治し、政治的な意思決定と経済活動の計画が統一されています。
これらの要素が、資本主義と共産主義の間の主な違いとなります。
資本主義は市場の自由と個人の自由を重視し、共産主義は平等と共同性を重視しているシステムになります。
現在、純粋な共産主義国家は存在しない
現在では、共産主義の理想を追求する国家は存在していません。
かつては、ソビエト連邦や中国、キューバなどが共産主義を掲げる国家でしたが、現在ではそれらの国々も純粋な共産主義体制とは異なる形態に変化してきています。
それは、政治的権力の集中、個人の自由や権利の侵害、経済の効率性の欠如など多くの問題、また、中央計画経済や集産主義〔生産手段の集中管理〕の傾向がイノベーションや経済成長を妨げることもあったことが大きな理由とされています。
例えば、現在の中国では「社会主義市場経済」と呼ばれる経済体制を1992年頃から採用しており、共産党が政治の中心でありながらも市場経済と国営企業の混合経済を推進しています。
同様に、ソビエト連邦の崩壊後、ロシアやその他の独立国家は市場経済を採用しました。
キューバも、共産主義政権を維持していますが、経済改革や外交政策の変化など共産主義の考え方とは一線を画す政策を採用しています。
そのため、純粋な共産主義のみを掲げる国家は存在せず、現代の世界では様々な思想や経済体制が混在していると言えます。