日本で唯一の死刑のみの罪

この日本にも、唯一死刑にしかならない法律があるのですが、どういったことをしてしまうと、その罪となるのでしょうか… 見ていきましょう。
刑法81条「外患誘致罪」

実は、今までにはこの法律の適用例がないということなのですが、その罪を、『外患誘致罪(がいかんゆうちざい)』といいます。
※外患(がいかん)…外からの攻撃。
※誘致(ゆうち)…招き寄せること。
この外患誘致罪は、外国政府に働きかけて日本国に対して武力を誘発させた者に、死刑のみが法定刑〔 刑法などで、各罪に対して規定されている刑〕となる犯罪になります。
≪刑法81条≫(外患誘致)
外国※と通謀(つうぼう)〔相手方とあらかじめ示し合わせて、事をたくらむこと〕して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処(しょ)する〔その刑罰を与える〕。
※ここでの外国とは、外国政府などの国家機関を指すそうです。
過去に一度だけ外患誘致罪が検討された『ゾルゲ事件』とは?

〔ゾルゲの外国通信員身分証明票〕
過去に一度だけ、この刑(旧刑法での)が検討されたことがあります。
『ゾルゲ事件』というもので、昭和16年に日本国内でおこった、日本人も含む、国際スパイ組織による事件がありました。
ゾルゲ事件とは…


1941年、太平洋戦争(第二次世界大戦)開始直前に発覚した、日本でおこった大規模な国際スパイ事件。
中心となったのは、リヒャルト・ゾルゲという駐日ドイツ大使館顧問〔ジョンソンという米国名に変えたソ連のスパイ〕と、尾崎秀実(おざきほつみ)〔近衛文麿内閣のブレーン。ソ連のスパイ〕という人物で、この信頼される立場を利用し、日本の政治や軍事に関する機密を、ソ連(現ロシア)に知らせたとして逮捕された。
最終的には外患誘致罪以外の法律により絞首刑となる。
現在では、日本は戦争を放棄しているため、ほぼ使われることがない法律とは言われているのですが、それほど遠くない時代にこのような事件があったわけですね…

