とても重要な『唾液』の役割
唾液は、私たちが日々の生活で欠かせない存在ですが、その重要性は意外に見落とされがちです。
実は、唾液はただの水分ではなく、消化や口腔の健康、さらには味覚にも影響を与える多機能な液体なのです。
ここでは、その唾液の役割について詳しく見ていきたいと思います!
唾液はどこから出て来る?
唾液は、唾液腺(だえきせん)という特定の器官から出てきます。
私たちの口の中には、3つの主要な唾液腺があり、それぞれ違う場所にあります。
- 耳下腺(じかせん)
耳の少し前、ほっぺたの上部にある大きな腺です。ここからの唾液は、特に食事中に多く分泌されます。 - 顎下腺(がっかせん)
顎の下にあり、口の奥の方に唾液を供給します。普段、食事の前後にも唾液を分泌します。 - 舌下腺(ぜっかせん)
舌の下にある腺で、他の腺と比べて小さいですが、常に少量の唾液を分泌しています。
これらの腺が、食べ物を口に入れたり、噛んだりすると刺激され、唾液を出して消化を助けています。
唾液の成分と働き
唾液は主に水分(99%以上)で構成されていますが、その残りには多くの成分が含まれています。
食べ物の消化を助ける
唾液の最も重要な役割の一つは、食べ物の消化を助けることです。
口の中で食べ物を噛むと、唾液が分泌され、食べ物と混ざります。この時、唾液中に含まれる「アミラーゼ」という消化酵素(しょうかこうそ)が炭水化物の分解を始めます。
〔アミラーゼの構造〕
例えば、
米やパンなどのデンプンを、砂糖の一種であるマルトースに変換するのですが、口の中で食べ物を噛んでいる間にはじまります。それが消化の第一歩です。
唾液がないと、食べ物は十分に分解されず、胃や腸での消化がスムーズに行えなくなります。結果として、栄養素の吸収が妨げられ、体に必要なエネルギーを得ることが難しくなります。
食べ物を飲み込みやすくする
唾液には粘液が含まれており、これが食べ物を潤滑にして飲み込みやすくしています。
食べ物が口の中で唾液と混ざることで、食べ物は柔らかくなり、喉を通りやすくなるのですが、もしも唾液がなかった場合、乾燥した食べ物を飲み込むのは非常に困難で、喉に詰まる危険性も出てきます。
味覚の感知を助ける
唾液は味覚にも対しても重要な役割をしています。
私たちが食べ物の味を感じるのは、唾液がその食べ物中の化学物質(味物質)を溶かすことによって可能になります。
唾液が食べ物を溶かすことで、舌の味蕾(みらい)がその化学物質を感知し、甘味、酸味、苦味などの味を感じ取ることができるのです。
そのため唾液が不足すると、味覚が低下し、食事を楽しむ感覚も減ってしまいます。
口腔内の健康を保つ
唾液は、口の中の健康維持にも影響しています。
唾液は口腔内を洗浄し、食べ物の残りかすや細菌を取り除く役割。そして、リゾチームという抗菌成分により口内の細菌の増殖を抑制してくれます。
そのため、唾液が十分に分泌されないと口内環境が悪化し、虫歯や口臭の原因となる細菌が増えやすくなります。
栄養素の吸収を助ける
最終的に、唾液は消化器官全体の働きを助け、栄養素の吸収を効率的に進めるための役割を果たします。
しっかりと唾液と混ざった食べ物は、胃や腸でさらに分解され、体に必要なビタミンやミネラル、エネルギー源となる栄養素をしっかり吸収できるのです。
唾液が少ないと、これらの過程が遅れ、体が栄養を十分に取り込むことが難しくなります。
1日の唾液の分泌量は? 分泌が多い時、少ない時。
1日に分泌される唾液の量は、通常約1〜1.5リットルと言われていますが、この量はさまざまな要因によって変動します。
食事や感覚の影響
食事をしているときや、食べ物の匂いを嗅いだり、食べ物を想像しただけでも唾液の分泌が活発になります。
特に、酸味の強い食べ物や飲み物〔レモンや梅干しなど〕を摂ると、唾液腺が刺激されて唾液の量が増えます。
これを「条件反射(じょうけんはんしゃ)」と呼び、食事の準備を体が始めるサインでもあります。
睡眠中はほとんど唾液が分泌されない
睡眠中はほとんど唾液が分泌されません。
そのため、朝起きたときに口が乾燥していることが多いのです。
年齢や健康状態によって変わる
唾液の分泌量は、個人の体質や年齢、健康状態によって異なります。
例えば、ストレスを感じると唾液の分泌が減ることがあり、また、加齢によっても唾液の分泌が減少します。
唾液の分泌が減ると、口腔乾燥症(ドライマウス)を引き起こし、口の中の不快感や健康問題につながることもあります。
まとめ
唾液は、私たちの食生活においてとても重要です。
飲み込みやすくし、消化を助け、味覚を楽しむ役割。また、口腔内の健康維持や栄養素の吸収にも影響を与えます。
食事の際には、唾液がしっかりと働いていることを意識し、ゆっくり噛んで味わうことで、より健康的な食生活を送っていきたいものですね!