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鉄は夏に膨張するって本当?その理由と身近な例をわかりやすく解説

機械・技術

鉄は夏に膨張する⁉




「夏の暑い日、金属は熱くなる」と聞いたことがある人は多いと思います。



しかし、実はそれだけではありません。



金属の代表格である「鉄」は、温度が上がると“膨張する”という特徴を持っています。つまり、夏のように気温が高くなる季節では、鉄はわずかに体積が大きくなるのです。


今回は、なぜ鉄が夏に膨張するのか、そしてそれが私たちの生活の中でどう現れているのかを、できるだけわかりやすく解説します!



なぜ鉄は熱で膨張するのか?



鉄をはじめとする金属には、「熱膨張(ねつぼうちょう)」という性質があります。



これは、温度が上がることで原子(げんし)〔物質をつくる最小の単位。すべてのモノのもと〕の振動が活発になり、それによって原子同士の距離がわずかに広がることで起こる現象です。



鉄のような金属は、分子の並びが規則正しいため、この熱膨張の影響が目に見える形で現れやすいのです。



たとえば、気温が20℃から40℃に上昇すると、鉄1メートルあたりで約0.25ミリほど膨張するといわれています。




主な材料の熱膨張(20℃上昇時・1mあたり)

材質熱膨張量(20℃上昇)備考
鉄・鋼約0.24~0.25mm構造材として多用される
アルミニウム約0.48mm鉄の約2倍膨張しやすい
約0.34mm電気・熱伝導率が高い
コンクリート約0.24mm鉄とほぼ同じで相性が良い
ガラス約0.015~0.18mm種類により大きく異なる(石英は非常に低い)
プラスチック約0.8~2.0mm種類によって大きく異なり、かなり膨張しやすい
木材明確な数値なし(方向・湿度依存)繊維方向と湿気により大きく変わる



数字にすると小さく感じますが、大きな構造物や長い鉄製品になると、この影響は無視できません。


エッフェル塔は夏に15cmも伸びる!



エッフェル塔は夏の暑さで鉄が膨張し、最大で約15~18センチ高くなります。


エッフェル塔は夏に高さが変わる⁉



鉄が膨張すると何が起きる?身近にある3つの例

1. 鉄道のレールが「うねる」ことがある




夏の鉄道に関係するエンジニアたちが、毎年特に警戒するのが「レールの熱膨張」です。



長い鉄のレールは、気温が高くなると膨張して押し合い、やがて“ヘビがとぐろを巻いたように”レールがぐにゃりと曲がることがあります。


これは「レールの座屈(ざくつ)」と呼ばれ、実際に列車事故の原因にもなり得る重大な現象です。




JRなどの鉄道会社では、真夏になると定期的に巡回して、レールの温度や変形をチェックしています。



2. 吊り橋や鉄橋の「継ぎ目」に秘密がある



高速道路や大きな橋で、一定間隔で「ガタン」と音がする部分、見覚えありませんか?



あれは「伸縮継手(しんしゅくつぎて)」と呼ばれ、橋の鉄部分が夏に膨張してもスムーズに動けるように設けられた隙間です。


もし継ぎ目がなかったら、夏の暑さで鉄が膨らんで、橋が押し合い、最悪の場合には歪んでしまうことも。道路や構造物の設計者は、自然の変化を見越して、あらかじめ「膨らむ余地」を残しているのです。



3. 建物の「鉄骨」も夏に変化している




大型ビルやタワーの構造にも、鉄がたくさん使われています。



そして、夏になるとその鉄骨も少しずつ膨張しています。設計段階から、気温による膨張率を計算し、ズレや圧力が集中しないように設計されているのです。


たとえば東京スカイツリーや東京タワーも、季節によって高さが数センチ単位で変わることが知られています。



冬は少し縮み、夏は少し高くなる。まるで鉄の塔が季節の呼吸をしているかのようですね!




鉄の膨張を逆に利用することも




この熱膨張の性質を「不便だ」と感じる場面もありますが、実は逆に利用しているケースもあります。


例えば、鉄の輪っか(リング)を軸にぴったりとはめ込みたいときには、まずその輪を加熱してわざと膨張させます



すると、通常よりもわずかに大きくなるため、軸にはめるのがスムーズになります。そして、はめ込んだあとで冷やすと、鉄は元の大きさに戻ろうとしてキュッと縮まり、軸に強く密着します。



この原理は「焼きばめ」と呼ばれ、機械部品の接合や鉄道車輪の固定など、精密で強力な接合が求められる現場で広く利用されています。



鍛冶屋と熱膨張の関係




その他にも、鍛冶屋が赤くなるまで鉄を熱してから叩くのは、鉄が高温になると柔らかくなり、加工しやすくなるという性質を利用しているからです。



このとき鉄は膨張して少し大きくなりますが、目的は膨張そのものではなく、金属の内部構造を整えたり、形を変えたりすることです。


熱いうちに叩くことで、鉄の中の結晶構造が細かく均一になり、強度や粘り強さ(靭性)が増します。



また、冷えると鉄は縮むため、鍛えた部品がしっかり締まるという効果もあるのです。これは「熱膨張」と「収縮」をうまく利用している例とも言えます。




つまり、熱膨張という一見「困った性質」も、見方を変えればとても便利な「自然のしくみ」になるのです。



まとめ:鉄は夏に膨らむ。「変化しないもの」ではなかった




鉄はその重厚な見た目から、動くことのない頑丈な素材と思われがちです。



ですが実際には、まるで「生きているかのように」気温に反応して、わずかに伸びたり縮んだりしています。

この特性は鉄の持つ基本的な性質のひとつであり、暮らしを支えるインフラや建築物は、こうした“微細な変化”を前提に作られ、安全性を保っています。


これだけ多くの場面で鉄が使われているわけですから、私たちもこの性質を少し知っておくだけで、身の回りの構造物への理解がぐっと深まるかもしれません!



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