犬の嗅覚が優れている理由とは?

犬は私たち人間が想像もつかないほど優れた嗅覚を持っています。
その能力は、警察犬として犯罪捜査に協力したり、災害現場で行方不明者を捜索したり、さらには病気の発見にまで役立っています。
犬の嗅覚が特別なのには、いくつかの生物学的な理由があります。
それでは、順に見ていきましょう!
『嗅覚受容体の数』が圧倒的に多い!

人間の鼻には約500万個の嗅覚受容体(きゅうかくじゅようたい)〔匂い分子をキャッチして脳に伝えるセンサー〕がありますが、犬には約3億個もの嗅覚受容体があります。
この違いだけでも、犬がどれほど多くのにおいを検知できるかが分かります。
例えば、
私たちがスープの香りを「おいしそう」と感じる間に、犬はスープの中に入っている野菜、肉、スパイスなど、個別の香りを区別することができるのです!
鼻の構造が特別!

犬の鼻は、吸い込む空気と吐き出す空気を別々に処理する仕組みを持っています。
鼻の側面にある穴から息を吐き出すことで、においの粒子がより多く鼻腔内に取り込まれるのです。
また、犬の鼻の内部には「嗅裂(きゅうれつ)」と呼ばれる特殊な構造があり、これがにおい分子を効率的にキャッチして、嗅覚受容体に届ける役割を果たしています。
『脳』の嗅覚を司る領域が発達している

犬の脳のうち、嗅覚を処理する領域は人間の約40倍も大きいとされています。
これにより、犬は複雑なにおいの情報を分析し、記憶する能力に優れています。
例えば、犬は何年も会っていない人のにおいを覚えていることがあるのです!
嗅覚の「分離能力」が優れている

犬はにおいの分離能力にも優れています。
一つの空気中に複数のにおいが混ざっていても、それぞれを個別に識別できます。
これが、警察犬が爆発物や麻薬など特定の物質を探し当てることができる理由の一つなのです!
においを「追跡(においの変化をも感じ取る)」能力がある

犬は時間の経過によるにおいの変化をも感じ取ることができます。
地面や空気中に残る微量なにおいを追跡し、特定の人物や物体を見つけ出します。この能力は野生の祖先が獲物を追うために発達したものだと考えられています。
においを嗅ぐ「習慣」がある
犬は常に地面や空気中のにおいを嗅ぐ習慣があります。それにより、環境の変化や新しい情報を得ることができます。
この嗅ぐ行為自体が、犬にとってはまるで私たちがニュースを読むようなものです。
犬種による嗅覚の違い

〔ブラッドハウンド〕
すべての犬が同じ嗅覚能力を持つわけではありません。
特に、ビーグルやシェパード、ブラッドハウンドといった「嗅覚犬種」は、においを追跡する能力が他の犬種よりも格段に優れています。
これらの犬種は嗅覚受容体の密度が高く、嗅覚処理能力が非常に発達しています。
🐕 犬種による嗅覚能力の違い 比較表
犬種名 | 嗅覚の特徴 | 嗅細胞の数(概算) | 用途・特性 |
---|---|---|---|
ブラッドハウンド | 最も優れた嗅覚を持つ。においの追跡能力はトップクラス。 | 約3億個 | 捜索犬・追跡犬として活躍 |
ビーグル | 嗅覚が鋭く、狩猟本能も高い。においに非常に敏感。 | 約2.25億個 | 検疫探知犬・狩猟犬 |
シェパード(ジャーマン) | 嗅覚と知能のバランスが良い。訓練に優れ、応用力あり。 | 約2.2億個 | 警察犬・麻薬探知犬・軍用犬 |
ラブラドール・レトリバー | においに敏感で穏やかな性格。訓練性が高く扱いやすい。 | 約2億個 | 盲導犬・爆発物探知犬・災害救助犬 |
ダックスフンド | 小型だが嗅覚が鋭く、獲物のにおいを追跡する能力に長けている。 | 約1.25億個 | 穴掘り・小動物の追跡 |
シベリアンハスキー | 嗅覚は標準的。持久力に優れるが、嗅覚追跡にはやや不向き。 | 約1億個前後 | そり犬・寒冷地作業犬 |
フレンチブルドッグ | 嗅覚はあるが短頭種で鼻腔が短く、嗅覚能力は高くない。 | 約5000万〜7000万個 | ペット向け・家庭犬向き |
- ブラッドハウンドはにおい追跡で最強とされ、100時間以上前の足跡もたどれると言われています。
- ラブラドールやビーグルは人との協働性も高いため、公共機関でも多用されています。
- 鼻の形状やサイズ(短頭種 vs 長頭種)も嗅覚能力に影響します。
犬の嗅覚の実用例

- 捜索活動:
地震などの災害現場で生存者を見つけ出す。 - 医療分野:
特定のがんや糖尿病の症状をにおいで感知できる場合がある。 - 警察活動:
麻薬、爆発物、人間の行方不明者などを追跡。
🐶 犬の嗅覚 vs 人間の嗅覚 比較表

項目 | 犬(Dog) | 人間(Human) | 比較・解説 |
---|---|---|---|
嗅細胞の数 | 約2億〜3億個 | 約500万個 | 約40〜60倍多い |
脳の嗅覚処理領域 | 脳の5%を占める | 脳の0.5%未満 | 犬は脳の大部分を匂い処理に使う |
嗅覚の感知精度 | 1兆種類以上のにおいを区別できる説あり | 数百万〜数千万種類 | 感度は数千〜1億倍高いという研究も |
匂いの追跡能力 | 数km離れたにおいも識別可能 | 非常に限定的 | 犬は足跡や個人の匂いを空気・地面から追跡可能 |
嗅覚に依存する行動 | 狩り、捜索、マーキング、識別など | 限られた用途 | 犬の行動の多くは嗅覚に強く依存している |
- 嗅細胞の数や脳の構造からも、犬がにおいに特化した生き物であることが分かります。
- 犬の嗅覚は人間の数千〜1億倍鋭いとも言われます。
犬の嗅覚は、進化の過程で食料を探したり危険を避けたりするために発達したと考えられています。
「嗅ぐ」という行為は、犬にとって私たちが「見る」ことと同じくらい重要であり、この能力は生き残りの手段として進化の中で洗練されてきたものだったのです!

