野球の歴史

日本でもプロ野球は根強い人気を誇り、今や国民的スポーツといえる存在です。
では、そもそも野球はどこから始まり、どうやって日本に広まったのでしょうか?
今回は、アメリカと日本、それぞれの野球の歴史をたどりながら、「2つの野球文化」がどのように育ってきたのかを分かりやすく紹介します!
アメリカ野球のはじまり:実は「起源不明」だった⁉
野球はアメリカ発祥のスポーツとして知られていますが、実はその「始まり」には諸説があります。
● アブナー・ダブルデイ伝説

〔アブナー・ダブルデイ〕
かつては、「1839年にアブナー・ダブルデイ将軍がニューヨーク州クーパーズタウンで野球を発明した」と広く語られていました。
しかし、これは長年親しまれてきた伝説的なエピソードにすぎず、現在では実際の歴史とは異なるものとされています。
実際には、野球に似たボールゲームはそれ以前のイギリスやアメリカですでに存在しており、野球の起源は特定の人物による発明ではなく、複数のスポーツ文化が少しずつ形を変えながら発展していったものと考えられています。
● 本当の起源はイギリスの子ども遊び?

〔クリケット〕

〔ラウンダーズ〕
専門家の間では、イギリスの「ラウンダーズ(rounders)」や「クリケット(cricket)」が原型となり、アメリカで独自のルールに発展していった、という説が有力です。
そして、1845年にアレクサンダー・カートライトという人物が、現在の野球に近いルールを整備し、「ナイン(9人制)」や「ダイヤモンド型のグラウンド」を導入。ようやく現在の野球が誕生したとされています。

〔アレクサンダー・カートライト〕
更に、1869年には世界初のプロ野球チーム「シンシナティ・レッドストッキングス」が登場したことで、野球は急速に全米に広まり、アメリカの国民的スポーツとしての地位を確立していきます。

〔シンシナティ・レッドストッキングス〕

〔その名の通り「赤い靴下」だった〕
日本に野球が伝わった日:明治時代の一人の青年の情熱からはじまる

〔開成学校(1873年)〕
日本に野球が初めて伝わったのは、1872年(明治5年)のことです。
アメリカ人教師のホーレス・ウィルソンが、東京大学の前身である開成学校で生徒たちに野球を教えたことが、その始まりとされています。
この出来事を機に、野球は日本に急速に広まり、瞬く間に多くの人々の間で親しまれるようになりました。
中でも特筆すべき存在が、1886年に創設された第一高等中学校(1894年に第一高等学校に。現在の東京大学教養学部)の野球部です。

〔第一高等中学校野球部(1890年)〕
このチームは日本で最初の本格的な野球チームとして活動を始め、やがてアメリカ艦隊の選手たちとの親善試合を行うほどに発展していきました。
その後、明治の終わりから大正時代にかけては、各地の学校で次々と野球部が設立され、野球は学生文化の中にしっかりと根づいていきました。
こうして、野球は次第に知性とスポーツの両面を持つ競技として、多くの日本人に親しまれるようになっていったのです。
プロ野球の誕生と戦後の野球熱

〔ベーブ・ルース〕
日本で初めてのプロ野球チーム「大日本東京野球倶楽部」(現在の読売ジャイアンツ)が誕生したのは1934年のこと。これは、ベーブ・ルースやルー・ゲーリッグなど、当時のアメリカ大リーグのスーパースターたちが来日し、日本各地で親善試合を行ったことがきっかけでした。

〔ルー・ゲーリッグ〕
この国際交流をきっかけに、日本国内でもプロ野球への関心が一気に高まり、1936年には日本初のプロ野球リーグが発足しました。これが現在の日本野球機構(NPB)の前身であり、日本に本格的なプロ野球文化が根付く重要な第一歩となりました。
しかしその後、第二次世界大戦の影響により、プロ野球は「敵国の競技」とされ、大幅な縮小と制限を余儀なくされ、公式戦が開催されない年もあったのです。
それでも終戦後、日本は復興への希望を託すかのように、再び野球に情熱を注ぎ始めます。野球は、混乱の中にある人々の心を明るく照らす象徴的な存在となり、プロ野球も次第に全国で人気を取り戻していきました。
そして1950年には、セントラル・リーグとパシフィック・リーグの2リーグ制がスタート。ナイター試合の登場やテレビ中継の普及、各地域に根ざした地元球団の誕生などが追い風となり、プロ野球は「国民的娯楽」として確固たる地位を築いていったのです。
一つのボールがつないだ友情と文化

野球は、単なる競技としてだけでなく、アメリカと日本、それぞれの社会や文化、そして時代の移り変わりを映してきた存在でもあります。
アメリカでは、野球は「自由」や「挑戦」といった価値観と結びつき、多くの人にとって努力次第で道を切り開ける象徴のように受け止められてきました。個人の力を尊重する文化の中で、野球は人々の希望となってきたのです。
一方、日本においては、野球は「礼儀」や「努力」といった精神を重視する風土の中で育まれてきました。特に高校野球をはじめとする学生野球では、真面目に取り組む姿勢やチームワークが大切にされ、多くの人の共感を集めてきました。
このように背景は異なるものの、アメリカと日本はお互いの野球文化を理解し合いながら、それぞれに発展を続けてきたのです。
これからも野球は、国や言葉の違いを超えて、多くの若者たちが交流し、成長していくきっかけとなることでしょう!

