東京ドーム200個分の大きさ
私たちが「生物」と聞いて思い浮かべるのは動物や植物です。
しかし、世界一大きい生物はどちらでもありません。
その名も『オニナラタケ』。巨大なキノコ〔菌類〕だったのです。
とはいっても、このキノコ、見た目では普通のキノコにも見えます。
安心してください。
実は、地下では驚くべき広さに広がっている巨大なキノコなのです。
オニナラタケの驚くべきネットワーク
オニナラタケが世界最大の生物と言われるのは、単に大きいキノコを指しているわけではありません。
オニナラタケは、菌糸という糸状のネットワークを地下に広げており、その広がりが非常に大規模なのです。
【菌糸(きんし)とは?】
菌糸とは、キノコやカビなどの真菌が成長するときに伸ばす細長い糸状のものです。
この菌糸が集まることで、菌糸体が形成され、これが土壌や木材などの中で広がり、養分を吸収する役割をしています。
どれくらいの規模かというと…
例えば、世界最大と言われれるオニナラタケがアメリカのオレゴン州にある「マルール国有林」に生息するのですが、その菌糸の広がりは約9.6平方キロメートル(約960ヘクタール)〔東京ドーム(約0.0467平方キロメートル)の200個分以上〕にも及ぶと言われています!
〔マルール国有林〕
このキノコの群体は推定で2,400年から8,000年も生き続けており、重さにして推定35,000トンにもなるという驚異的な大きさとなっています。
どうしてこんなに大きくなるの?
オニナラタケが非常に大きく成長する理由は、地下に広がる菌糸が環境に適応しながら長期間にわたり成長し続けるためです。
菌糸は細い糸状の構造で、土壌中の有機物を栄養源として吸収し、切れても再生しながら広がり続けます。
また、オニナラタケはとても長寿で、数百年から数千年生きることができ、長い年月をかけて成長することが可能なのです。
そのため、オニナラタケは他の生物と比べて圧倒的に大きくなります。
ナラタケの自然への影響
〔ナラタケは、北海道では「ボリボリ」という名で親しまれている〕
世界最大生物のタイトルを持つオニナラタケ(ナラタケ)ですが、実は、木の根に寄生して木を枯らし、森林に深刻な被害をもたらすことがあります。
それは「根腐れ病」と呼ばれる症状で、針葉樹林に深刻な影響を与え、広範囲で森林が衰退することがあります。
勿論、菌類であり分解者であるオニナラタケは、枯れた木や有機物を分解し、土壌に栄養を戻すことで、他の植物の成長を助ける役割も持っています。
とはいえ、オニナラタケが過剰に増えると、木が大量に枯れて森林のバランスが崩れ、動物の住処(すみか)が失われるなど、生態系全体に悪影響を及ぼすこともあるようです。
最後に
オニナラタケは、地表に現れる小さなキノコでありながら、地下には広大なネットワークを持つ巨大な生命体です。
目に見える巨大なゾウやクジラのような動物とは異なり、そのほとんどが地下に隠れているため、世界最大の生物と聞くと驚くかもしれません。
この事実は、「生物の大きさ」に対する私たちの認識を根本的に変えることになるでしょう。
しかし、この隠れた巨大生物であるオニナラタケは、その驚異的な成長力と長寿を通じて、自然界の神秘を私たちに感じさせてくれます。