遺伝子とDNA
私たちの体を動かしているのは何か?と聞かれたら、多くの人は「脳」や「心臓」と答えるかもしれません。
けれども、体の本当のところの設計図は「遺伝子(いでんし)」と呼ばれるものに隠されています。
この遺伝子が、私たちの体の成長や特徴を決定する、いわば体の小さなガイドラインなのです。
遺伝子の正体
〔DNAの構造〕
遺伝子は、DNAという物質の中に書き込まれています。
DNAは、デオキシリボ核酸(でおきしりぼかくさん)という少し難しい名前ですが、とてもシンプルな構造を持っています。
それは、二重らせんという形をしており、長い紐のようなものが私たちの体内(細胞)にしっかりと収納されています。
そして、このDNAの中に私たちの髪の色や目の形、さらには身長や体質までをも決める情報がびっしりと詰まっているのです。
遺伝子はどのように働く?
遺伝子は、私たちの体内で「タンパク質」を作るための設計図でもあるのですが、このタンパク質が、体の細胞を作り出し、体の機能を支えています。
例えば、髪の色を決める遺伝子の場合、髪の色素を作るためのタンパク質の生産を指令している、といった感じです。
『DNA・遺伝子の仕組み』をもう少し詳しく
私たちの体は何十兆個もの細胞からできており、各細胞にはDNAが含まれています。そのDNAには約2万個の遺伝子が詰まっていて、それぞれが特定の役割を持っています。
例えば、目の色を決めたり、体がどのようにエネルギーを使うかをコントロールしたりなどなどです。
遺伝子は、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)という4つの化学物質が並んで構成されているのですが、これらの4つの「要素」が組み合わさることで、遺伝子の「コード」が形成されます。
その「コード」が、細胞に対して「このたんぱく質を作りなさい」という命令を出し、その結果、体内でさまざまな反応が引き起こされています。
遺伝子の役割
遺伝子は私たちの見た目や性格、健康状態に影響を与える以外に、進化の鍵の役割があると言われます。
どういうことかというと、遺伝子が突然変異〔遺伝子における予期しない変化やエラー〕することにより、新しい特徴や性質が生まれるのです。
例えば、ある動物が寒さに強い遺伝子を持つ突然変異を起こすと、その動物は寒冷地で生き残りやすくなり、その有利な遺伝子が次の世代に受け継がれていくといった仕組みです。
遺伝子研究の未来
現代の科学では、遺伝子の情報を調べることで、私たちがどのような病気にかかりやすいかを予測したり、効果的な治療法を見つけたりすることが少しずつできるようになってきています。
また、遺伝子編集(ゲノム編集)の技術も進化しており、将来的には私たちが望む特定の特徴を持つように遺伝子を変えることができる可能性もあります。
まとめ
遺伝子とは、私たちの体の隅々までに影響を与え、そして何百万年もの進化の歴史が詰まっている小さな生命の設計図です。
もちろん、遺伝子だけで全てが決まるわけではありませんが、私たちが「誰であるか」を決める重要な要素であることは間違いありません。
科学の進歩により、遺伝子の秘密がますます解き明かされ、私たちの健康や未来に大きな影響を与える可能性が広がっています。