曜日の起源
曜日のシステムを最初に考え出したのは、シュメール人だと考えられています。
シュメール人たちの文明であるシュメール文明(紀元前3000年頃)は、メソポタミア(現在のイラク)で栄えたのですが、曜日の基となる天文学的知識や宗教的観念が後の文明に大きな影響を与えました。
そして、このシュメール人の、太陽や月、目に見える惑星を重要視した天体に基づく考え方が、後のバビロニア人によって引き継がれ発展していきます。
バビロニアの人たちは、天体観測を基に、太陽、月、そして当時目で見える5つの惑星〔水星、金星、火星、木星、土星〕をそれぞれ1日ずつに割り当て、一週間を7日間「七曜」に分けたとされるのですが、更にはこの考え方がギリシャやローマに広がり、現在私たちが使っている曜日となったのです。
バビロニアからローマへ
ビロニアの天文学と神話がギリシャやローマ文化に影響を与えたことにより、ローマ人は各曜日を神々に関連付けました。
各曜日の由来
月曜日(Monday)
月曜日は、ローマ神話の「月の女神 ルナ」に由来しています。
ラテン語〔古代ローマのラティウム地方(現在のイタリア中部)で使われていた〕では「dies Lunae」と呼ばれ、「ルナ」の名前がそのまま曜日に反映されています。
ルナは夜空を照らす月を司る神格で、月曜日は彼女に捧げられた日となります。
【なぜ、ルナがMonday?】
ラテン語の「dies Lunae」がゲルマン系言語に取り入れられ、やがて古英語で「Monandæg(モナンデイ)」という形に変わります。
「Monan」は「月」を意味し、「dæg」は「日」を意味します。この「Monandæg」が時を経て現代英語の「Monday」に変化しました。
※その他、ゲルマン神話の月の神に相当する「マーニ(Máni)」も影響しているといわれます。
【ゲルマン系言語】
インド・ヨーロッパ語族に属する言語群で、英語、ドイツ語、オランダ語、スカンジナビア諸国の言語(スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語など)など
火曜日(Tuesday)
〔ヴィーナスとマルス〕
火曜日は、ローマ神話の「戦の神 マルス」に由来しています。ラテン語では「dies Martis」(マルスの日)と呼ばれています。
マルスはローマ神話で軍事と戦争を司る神であり、火曜日は彼にちなんで名付けられた日となります。
【なぜ、マルスがTuesday?】
ゲルマン部族がローマの曜日の概念を受け入れる際、ローマの神々に対応する自分たちの神を当てはめました。神マルスに相当するのが、ゲルマン神話の「テュール(Týr)」です。
古英語から時を経て現代英語の「Tuesday」に変化したとされます。
水曜日(Wednesday)
水曜日は、ローマ神話の「伝令の神 マーキュリー」に由来しています。ラテン語では「dies Mercurii」(マーキュリーの日)です。
マーキュリーは神々の使者であり、商業や旅行、知恵を司る神として崇められていました。
【なぜ、マーキュリーがWednesday?】
ゲルマン部族がローマの曜日の概念を受け入れる際、マーキュリーに相当したのが、ゲルマン神話の「オーディン(Woden)」です。
古英語の「Wōdnesdæg(ウォーデンの日)」が、時を経て「Wednesday」へと変化しました。
木曜日(Thursday)
木曜日は、ローマ神話の「雷神 ジュピター」に由来しています。ラテン語では「dies Iovis」(ジュピターの日)です。
ジュピターはローマ神話の最高神であり、雷や天を司る強力な存在として木曜日に結びつけられています。
【なぜ、ジュピターがThursday?】
ゲルマン部族がローマの曜日の概念を受け入れる際、ジュピターに相当したのが、ゲルマン神話の雷神「トール(Thor)」でした。
古英語では「Þūnresdæg(トールの日)」となるのですが、「Þūnre」は「トール」を意味します。この「Þūnresdæg」が、時を経て現代英語の「Thursday」になりました。
金曜日(Friday)
金曜日は、ローマ神話の「愛と美の女神 ヴィーナス」に由来しています。ラテン語では「dies Veneris」(ヴィーナスの日)です。
ヴィーナスは愛、美、豊穣を象徴する女神で、金曜日は彼女に捧げられた日となります。
【なぜ、ヴィーナスがFriday?】
ゲルマン部族は、ローマの神々に対応する自分たちの神々を当てはめたのですが、ヴィーナスに相当するのは、ゲルマン神話の「フリッグ(Frigg)」または「フレイヤ(Freyja)」となりました。
古英語の「Frīgedæg(フリッグの日)」から時を経て現代英語の「Friday」になりました。
土曜日(Saturday)
土曜日は、ローマ神話の「農業と豊穣の神 サートゥルヌス〔英語:サターン〕」に由来しています。ラテン語では「dies Saturni」(サートゥルヌスの日)です。
サトゥルヌスは時間や農業を司る神で、彼に捧げられた土曜日は古代ローマにおいて特別な日でした。
【なぜ、サートゥルヌスがSaturday?】
他の曜日がゲルマン神話の神々に置き換えられたのに対して、土曜日はローマ神話の影響を強く残しており、ゲルマン神話では対応する神がありませんでした。
そのため、古英語でも「Sæternesdæg(サートゥルヌスの日)」という名称が使われ、これが現代英語の「Saturday」へと変化しました。
日曜日(Sunday)
日曜日は、ローマ神話の「太陽神 ソル」に由来しています。ラテン語では「dies Solis」(太陽の日)です。
太陽の光と生命力を象徴する日曜日は、後にキリスト教においても礼拝日として重要な位置を占めました。
【なぜ、ソルがSunday?】
ゲルマン部族がローマ文化を受け入れる際、太陽崇拝も取り入れられました。
ゲルマン神話でも太陽を司る存在は重要で、太陽は「Sunna(スンナ)」または「Sól(ソール)」という太陽の女神に置き換える形で受け入れました。
古英語では「Sunnandæg(スンナの日)」と呼ばれており、これが現代英語の「Sunday」に変化しました。
このように、曜日の名称にはローマ神話に基づいた神々の性質や役割が色濃く反映されています。
日本の曜日の名前は、何に影響されている?
日本の曜日の名前は、古代中国からの影響を受けており、天体や自然の要素に基づいているのですが、七曜(しちよう)と五行説(ごぎょうせつ)の両方が関わっているとされています。
七曜(しちよう)
七曜(しちよう)とは、古代中国の天文学に基づくもので、太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星の七つの天体を曜日に割り当てたものです。
- 日曜日(にちようび):太陽(Sun)
- 月曜日(げつようび):月(Moon)
- 火曜日(かようび):火星(Mars)
- 水曜日(すいようび):水星(Mercury)
- 木曜日(もくようび):木星(Jupiter)
- 金曜日(きんようび):金星(Venus)
- 土曜日(どようび):土星(Saturn)
これらは、天体の動きに基づく古代の占星術と時間の概念に由来しており、日々のサイクルに組み込まれたものなのですが、日本ではこの七曜の体系を取り入れ曜日の名前が付けられました。
七曜の起源 まとめ
七曜の起源については、以下のような歴史的背景があります。
【古代バビロニア】
七曜の起源は古代バビロニア(現在のイラク地域)にさかのぼると考えられています。バビロニアの天文学者たちは、月と太陽、そして5つの惑星を観察し、これを基に曜日のシステムを作り出しました。この天文学的な体系は、後に周辺の文化や文明に影響を与えました。
【古代エジプト】
古代エジプトでも、天体を基にした時間の測定方法が存在しました。エジプトの天文学や宗教的な信仰は、後の天文学的な体系に影響を与えました。※しかし、七曜の具体的な形式がエジプトに起源するかは明確ではありません。
【古代ギリシャ・ローマ】
バビロニアから伝わった七曜の概念は、古代ギリシャやローマにも影響を与えました。特にローマでは七曜が広まっていき、曜日の名前がラテン語に基づいています。
最終的には、【古代中国】において七曜が体系化され、日本やその他の国々に伝わり、現在の曜日のシステムが形成されました。
五行説(ごぎょうせつ)〔五行思想(ごぎょうしそう)〕
古代中国の思想で、自然界のすべての現象は「木」「火」「土」「金」「水」の五つの要素に分類されるとする考え方です。
曜日の名前においては、「木曜」「火曜」「土曜」「金曜」「水曜」が反映していますが、これは五行説の影響を受けた部分となっています。
これらのことにより、日本の曜日の名前は七曜の7つの天体、そして五行説の要素がそれに追加された形と考えられています。
まとめ
曜日の名前の起源は、古代バビロニア人の天体観測とそれに基づく7日間〔1週間〕から始まりました。
そして、ギリシャやローマを経て世界に広がり、1週間の曜日には、それぞれ古代の神話や天文学的な影響が色濃く反映されます。
さらに日本では中国の陰陽五行思想とも結びついて、現在の曜日が確立されたということになるようです。